「お兄ちゃんには見えてないみたい」 そういって、梓は「そう……」 独特の間を置いて、話す彼。
「どうして此処に?」 再び精霊は話しかける。 梓は精霊のとなりに腰を掛ける。葵は訳が分からないながらも、梓の隣に座り込む。
「うーん。なにかぼやっとした光が見えるけど……」 葵の方は辛うじて雰囲気を掴める程度で、それそのものの姿は見えていないようだった。「やっぱり梓には人に見えないものがよく見えるんだ。想像力が豊かなのかもしないね」 葵はそう言って、梓の方を向く。
「何か言ってるの?」 葵が梓に尋ねる。「どうしてここにきたの?っていってるよ」 梓は葵に通訳するように話す。「どうして? それを伝える必要があるのか?」「だって」 梓は彼の方に向く。「答えたくなければ答えなくていいよ」 彼は人形のような表情をしている。「お兄、怒ってる?」 梓は葵の方を向き訪ねた。「怒ってないよ」「なんで?」「……怒ってないって言ってるだろ」「それじゃ、さっきからどうしてあさっての方、向いてるの?」「……怒ってるわけじゃないけど、腑に落ちない点がいくつかある。 一つ、なぜ梓には見えて、僕には見えないのか。 二つ、君には僕のことは見えてるのか。 三つ、なぜ梓の前に姿を現したのか」 葵はつっけんどんに話す。「答えれる?」 梓は彼に答えを促した。「まず、僕が見えないのは、ただの気の所為だと思うよ。姿を現したのは、別に僕の意志だけじゃない。……端的にいうならば、引き合った……という感じかな。僕には君の姿は見えているよ」 淡々と答える彼。その言葉をそのまま梓は葵に伝える。
「僕がここに来たのは、妖精を見るためなんだ。そんなのはお話の中だけだってお父さんは言ってたけど、お婆ちゃんは昔この森で妖精を見たって言うんだ。お母さんには危ないから勝手に入っちゃだめだって言われたけど、見たかったから……内緒でフェンスを越えて入ってきたんだ」「危ないとこもあったよね、面白かったけど」